「んじゃ家着いたらメールちょうだい」


「うん。わかった」


悠希は寂しげな表情を浮かべ、それから黙ったままだ。


こんなに側にいるのに。


手を伸ばせば触れられるのに、あたしの一方的なくだらない意地が二人の距離を広げる。


「んじゃ、あたし帰るね」


「また近々会って」


「…」


「会ってよ…」


「…じゃ」


車のドアを開け、あたしはさっさと車を降り、悠希を見送りもせず家の方向へ歩き出す。


少ししてから車が走り出す音が聞こえ、足を止めた。


「馬鹿みたい…」


車が遠くに悠希を連れ去ってしまう。


愛してる悠希を連れ去ってしまう。


あたしはその場に座り込み、涙が溢れてしまった。


こんな時ですら素直になりきれない自分が情けなくて、頭を抱え、灰色の道路に透明な涙を落とす。


「悠希違うの。歩が謝らなきゃいけないの。ごめん…」


余韻すら残らない道路を見つめ、悠希に謝まり声をあげる。


一ヶ月ぶりの再会を感動的なもので迎えず、自らの意地で踏みにじったバカな自分。


本人が居なくなったらどうしようもないのにひたすら謝り続け、声をあげ、なりふり構わず泣き続けた。



結局その日。


悠希とはメールを通し、すぐ和解をした。


「せっかく来てくれたのに冷たくしちゃってごめんね。近々ちゃんと会うのでその時ごめんなさいさせてください」


メールだと素直に謝れるのに、本人を目の前にするとどうしても言えない。


根本の意地っ張りな性格は埼玉に行っても変えられなかった。


必要のないプライド。


そんな無駄なプライドが邪魔をしたんだ…