娘をあんなに謙遜してたのに玄関まで母は出てきて、出迎えてくれた。


「姉ちゃんから歩が帰るって電話きたからわかったけど、帰ってくるのもうちょっと後じゃなかったの?」


母はあたしが予定より早く帰ってきたのが不思議そうだ。


それはそうだろう。


母からしたらこんなに早く?ってくらいの期間なのだから。


「彼氏と喧嘩してさ…」


「喧嘩?」


「ムカついたから奴を怒鳴りに帰ってきた!それだけ!」


“まったくこの子は”と言わんばかりの顔をする母。


バカな娘はまた突拍子もない行動で母を困惑させてしまってる。


懲りない娘の突拍子もない出戻り。


「まぁ勝手にしなさい」


母は常にこんな感じで深く追求しない人。


サラッと流し、余計な話は聞かない人。


前のあたしならこんな母ですらうっとおしく感じ、恨めしそうに睨んだが、母が影で心配していたと知り、自然と優しい気持ちになれる。


「ははっ。勝手にする~じゃあね」


あたしは笑って自分の部屋へ荷物を置きにいった。


懐かしい匂いを肺いっぱい吸い、窓を開け、背伸びする。


「んあ~っ!帰ってきたぞ」


自分の居場所はここなんだと確信し、あたしは悠希が住む場所と離れていても同じ県内にいるだけで嬉しくなっていた。