早く会いたい。


みんなに会いたい。


二時間の孤独な旅は不思議と孤独は感じず、携帯を握り締める必要がなかった。


パニックが起こらぬうちに車内販売のワゴンからお茶を購入し、口に含み外にずっと見いる。


行きとは逆の見慣れた風景が目に移り、山や川を新幹線は横切って行く。


たった一カ月程度離れただけなのに、緑一面の田舎の風景がやたら懐かしい。


そしてパニックは見事一切起こらず、新幹線は地元の小さな駅へとたどり着いた。


改札口を抜け、学生時代何度も無賃乗車で使用したサクに軽く手を触れ、生意気な学生だった自分を思い出したらなぜか笑えた。


地元に付き、売店でタバコを買って久しぶりに口に加えじっくり一服し、そこからタクシーを拾ろってあたしは母親の元へ向かった。


タクシーの車内では再び学生時代に歩いた街並みを懐かしみ、仲間とたむろっていた場所を発見しては目で追いかける。


約10分のタクシーでの冒険。


実家の前に着いたタクシーは横付けしてもらい、その場に降ろしてもらった。


――これから住む家はここなんだ


家の前に立ち、自分に言い聞かせ深呼吸をして扉を勢いよく開ける。


「ただいま!」


学生の時はこんな言葉を決して言わなかった。


家には誰もいないって知ってたから。


でも、今は…


「お帰り。姉ちゃんの所どうだった?」


会話がある。


あたしの居場所はここにある。