つい、悠希と彼を重ねてしまった。


もう大切な人は失いたくない。


二度と失いたくない。


本当に嫌だ。


「事故なんて絶対起こさない!安全運転で行くから!」


「絶対起こらない事故なんてない!」


激しい言い合いになっても悠希は深い事情を知らないのに、あたしの感情だけが走り出す。


「なんで!?早く会いたいんだよ!」


「もういい!来るなら別れる!」


――死なれるくらいなら別れる


過剰反応しすぎかもしれない。


考え過ぎかもしれない。


それでもあたしはそれぐらい死を恐れていた。


怖かったんだよ。


人が死ぬって事が。


「別れるってなんだよ!?」


「いいからくんな!」


悠希にちゃんと説明しなきゃわからないのに、事情をなぜか言えなかった。


口で伝えなきゃ伝わらない思いがある。


わかってても言えない自分へ浅はかだ。


「……。はぁん。別れるの」


悠希の声はトーンが落ち、空気が一気に変わっていくのを感じた。


冷たくひんやりとした水に足を浸した感覚の空気。


「ん?」


「お前、俺に性病検査させたよな」


「させたよ。移ってないか調べる為にね」


言えば言うなりに気まずさは増していく。


迫力がある中、怒った口調で悠希は話し出した。