~死~


あたしにはとてつもなく重たい十字架。


償いきれない罪の戦慄。


悠希と出逢う前。


大切にしていた友達はこの世ではない遠くへ自ら先に旅だったんだ。


彼はいつもあたしに強気でかかってくる一個年上の人で、顔を付き合わせれば年中喧嘩してた。


目があえは「お前気つえぇな」っていつも笑ってあたしを馬鹿にし、からかってくる。


最後彼が店に来た日。


いつもの強気はなく、弱気で何かが違っていた。


「真剣に俺を叱ってくれる奴はお前しかいないんだ。なぁ叱ってくれよ!」


「なぁに言ってんだ。いつでも相談のってやっから!」


「どうしたらいいかわかんねんだ。歩。俺どうすりゃいいんだよ…」


「ったくシャキッとしろよ!バカかてめぇは!」


「…やっぱお前は気つえぇな…。こんな相談するのお前しかいねぇわ…」


明日は必ずあると思っていたから、いつでも相談にのれると思ってた。


だが数日後、彼は命の灯火を自ら消したんだ。


助けを求めていたのに。


お前しかいないってすがり付いてきたのに…


何もしてやれなかった。


気付いてやる事すらできなかった。


冗談ぽく笑顔で帰っていった彼。


「またくっから!」


思い返せば帰り際、手を振りいつも言っていた台詞を残していかなかった。


しっかり手を離さずに握ってあげてれば…


失うのはもう…


明日どうなるかなんてわからない。


笑っていた人が目の前から消えて行くのはあっという間で、必ず来る明日なんてない。