「歩…」


「…」


「姉ちゃんさ…」


「ん?」


何処かたどたどしい姉の口調に、言いずらい何かを話そうとしているのがわかる。


かなりヤバイ感じがする。


「…姉ちゃんさ、こっちきてストレスたまって」


「…」


「…たまって…髪の毛全部抜けちゃってさ…一本もなくなったんだ…」


「えっ!?」


「で、体も壊したんだ。そん時、血便も止まらなくて結構たってから医者行ったら、よくこんな状態までほっといたな。普通は倒れて入院だからって言われてさ」


遠く離れていたとはいえ、力にさえなってあげられなかった自分。


誰よりも強いと思っていた姉の衝撃的な話しにとてつもないショックをうけた。


女にとって命の髪が一本も無くなる。


それは息絶えたも同然。


「えっ!髪!?血便とかなんで病院行かなかったの!!」


身を乗りだし、テーブル越しの姉を見つめ、目を見開いた。


そんなあたしを姉は強い眼差しで見つめ返し、こう口にした。


「負けたくないのとプライドだよ」


こんなに遠く離れてても、あたしと姉は同じ時を生きていた。


~負けたくない。プライド~


「プライド…」