その翌日。


また相変わらずあたしは冗談を交え、ふざけて茶の間で子供達と遊んでいた。


すると学君が普段より遅く仕事から帰ってきた。


「ただいまぁ」


「パパおかえりぃ~」


「…」


昨日の今日話したくらいで互いに相手に馴れるわけはなく、あたしは学君に「お帰り」の挨拶すらしなかった。


嫌いじゃないが、雰囲気がイカツクてただの元ヤンじゃない貫禄が滲み出ていて、学生時代の昔の仲間を思い出すからあまり近寄りたくない。


「歩。ほれ、開けて見ろ」


「えっ?」


そんな内情を知らない学君は手にした大量の紙袋をテーブルの上に置き、あたしに話かけてきた。


何も考えず言われるがまま紙袋を開き、とぼけた顔を作る自分。


中には一眼レフカメラのフルセットが入っていた。


「これ…」


固まって袋の中を除き、手すら動かせない。


欲しかった現物が目の前にあるのだから。


「お前にちゃんと結婚祝いしてねえしな。もうバツイチだから離婚祝いか?」


学君は背を向け、仕事着を床に脱ぎ捨て、冗談まじりに笑って話しかけてきた。


固まって動けずにいるあたしの後ろを子供達は興味があるらしく、行き来する。


「これ歩ちゃんの~?」


「いっぱい入ってるね」


「僕には~?」


覗き込む子供達は口うるさくキャーキャー話す。


まるで気まずさを打ち消してくれる天使達。


優しい子達…


そんな優しい子達の父親、学君はあたしをしっかり家族として迎えいれてくれてたんだ。


なのに自分ときたら…


あたしが自分に情けなくなり声も発さず黙っていたら


「カメラ好きそうにしてたからな。これでいろいろ撮れよ」


学君はすぐに立ち上がり、恥ずかしそうに自分の部屋へ行こうとした。


「…ありがとう」


「いえいえ」


優しさに包まれる日々にどうしていいかわからない。


リアクションもうまくとれなくて、全く可愛げのない妹。


でも本当に嬉しかったんだよ。


恥ずかしくてちょっと見ただけですぐにしまっちゃったけど、本当に嬉しかったんだ…