それから数日後の日曜。


家族みんなで県内にある動物園へ行った。


澄みきった晴天の中、さほど大きくない動物園だがカンガルーが野放しにされていたり、身近で動物に触れられる子供には夢のような世界だ。


そんな中、せっかく動物を見に来たのにあたしは動物に見向きもせず、姉の旦那の学(まなぶ)君からカメラを借りて、カメラ小僧並みに子供達のシャッターチャンスを狙っている。


「こっち見てみ!いい顔して!」


動物を見てはしゃぐ子供達に負けず、あたしもやたらはりきってはしゃいだ。


「ほら~いい顔いい顔!」


「歩ちゃんチーズは!」


「はい。チィーぷふっ!」


「何それ~ちげぇ~し!」


「うっせぇガキ共だなぁ~ピースなんかしてみろ~歩ちゃん浮かれてカンガルーとボクシングしちゃうんだから」


「え~っ!歩ちゃんやられちゃうよ!」


「なめんなよ~奴なんざ一撃だっつの。つうのは冗談でほれいくよ。はい、チーズ!」


カメラのシャッターをきり、声を出していると、隣にいた学君が突然話しかけてきた。


「カメラ好きなん?」


「えっ…あっ、よくわかんねえ…でも夢中になるし、なんか楽しいや」


本当はカメラが大好きなのに、今まで学君とまともな会話すらしてなく、うまく話せなくてたどたどしい返事をした。


義理の兄とはいえ、遠くに住んでいてあまり接点がない相手。


互いに違和感がないはずはない。


「そっか」


結局その一言を話した程度で学君と会話も続かず、子供達が動物を見終わるまであたしはひたすら写真を撮りまくった。