「こんなガキ連れてくるから話しになんねえじゃねえか!ガキ連れてくりゃどうにかなるとでも思ったのか!?汚ねぇ女が!」


「自分が女作ったんでしょ。あんたが悪いのになんで歩に対して怒鳴るの!」


「あんな場所にこんなガキ連れて来るからだろうが!ふざけやがって。このクソアマ!」


愛菜くらいの時からあたしは父と母の争いを目の当たりにして育ち、心は見事に屈折していた。


中学時代は賭博していた父は友達に恨みをかい、その矛先は弱いあたしに向けられ、あたしは誘拐されそうになり、警察まで動かし大騒動。


車に押し込まれかけたが悲鳴をあげ、間一髪で逃げ切れた。


それなのに警察に「父の友達が犯人です」なんて言えず、事情聴取中、黙って俯いていた自分。


大人になるにつれ心なんてどこかに捨て、歪んだ物の見かたしかできなくて。


…それなのに


…心なんて捨てたはずの自分はこの小さなタンポポを見て綺麗と思えていた。


日に日に変わっていく自分に戸惑いさえ感じ、これがいい事なのかわからない。


でも、悠希といた時に暖かな気持ちになれた感覚に似てるんだ。


何かが違う。


何かが変わり始めてる。


姉の家族に囲まれ一人の時間がない環境は戸惑いもあったが、求めていた家族そのものがそこにはあった。


ここに来る前は夜色に染まり、一人を嫌い、人を利用しまくっていただけにこの環境がくすぐったい。


あたしは変われている。


変わりかけている。