日中は二人の娘の子守りをし、ゆっくり流れる時間。


物事に縛られず、焦る必要はどこにもない。


キャッキャはしゃぐ姪っ子の可愛い声。


ゆっくりゆっくり流れる時間。


午後は買い物に行き、知らない人、知らない街並みにドキドキして姉の後を着いて歩く。


「姉ちゃん。ふらつくよ」


「もうちょいだから頑張ってみ」


「立ってるんしんどい」


「運動!お前陽に当たらなすぎ。赤ちゃんより真っ白じゃん」


手に冷や汗をかいても必死でカートを押し、自分の気持ちを奮い立たせ、前に足を出す。


出来ないと思うから出来ない。


今まで出来てたんだから出来る。


一瞬起きたふらつきにびびってたけど、隣に姉がいてくれたからなんとか買い物もこなせた。


帰ってきてからは春の陽射しと心地よい風を全身に浴びる。


手を目の上にかざし、太陽の光のまぶしさを遮る。


庭の地面に咲く小さなタンポポを見て


「愛菜(まな)こっちにおいで。ほら、たんぽぽだよ。可愛いね」


「歩ちゃん。黄色のちっちゃいタンポポ可愛いね」


姉の子を手招きして二人で自然に触れるひととき。


――やっぱあたし綺麗な物を綺麗って思えなくなってたんだ


今まで振り返りもしなかった雑草にじっくり見いってしまい、すさんだ自分はなぜかこの雑草が綺麗に見えて仕方なかった。


愛菜はタンポポに手を伸ばしそっと花の部分を指先で撫で、美しく、優しい顔をしている。


あたしも撫でようと手を伸ばしたら、今まで太陽の光を浴びていなかった青白い手がやけにか弱く見え、手を止めた。