姉の家での生活は始まったが毎日何をするわけでもない。


時の流れに身を任せ、ただただ生きている。


酸素を吸い、二酸化炭素を吐くローテーション。


だが、人の家で世話になるには一人だけ浮いた行動は出来ず、その家族の時間に合わせた生活を送らなきゃいけない。


姉の家族は、姉・旦那・子供四人の家族構成。


朝早い姉の子供達はすでに起きていて保育園や学校に行く準備をし、生活が逆転したあたしは体内時計が狂っていて皆に合わせなかなか起きれない。


寝起きの体を起こせず、布団にくるまっていると


「歩。朝ご飯できたよ」


ふすまが開き、焼き魚の匂いと共にあたしの元へ姉が顔を出した。


「つらい…」


「無理に起きなくていいよ。もう一寝入りしたら」


そう言われると甘えている自分に気付き、何がなんでも起きなきゃいけない気がした。


寝癖頭で茶の間へ向かうと、テーブルに手際よくバランスのいい食事が出されてあり、相当寝ぼけていたあたしは苦手な魚を口に放り込んでいた。


「あれ?おいしい…」


「なんだ食べれるじゃん!」


あたしが子供の時から好き嫌いが激しい子だったと知る姉は、苦手な魚を口に含んだのを見て嬉しそうに微笑む。


「食えちゃった」


「もう一口いけるよ」


「いや、これ魚だし」


「そら魚でしょ」


「骨いるし」


「我が妹ながらウケるわ…天然かっつうの」


「鮭が」


「わぁったっつの」


まだ保育園に通ってない二人の娘と姉で囲む食卓に戸惑いつつ、自然と笑みがこぼれ、会話して食事が進む。


くだらない姉妹の会話なんて何年ぶりだろうか。


父の姉に対する暴力が凄くて小4の時、姉は16歳で東京に消えてしまったから約12年ぶりの会話だ。


こんなに時を刻んでも、姉はなぜかあたしの中にすんなり溶け込んだ。


姉妹って


不思議な存在だなと感じた。