「いやぁ~楽しかったな」


「かなり楽しすぎ!」


来た時は明るかった外も夕暮れを迎え、いかに充実してた時間だったかが伺える。


プリクラ記念に狙ったUFOキャッチャーのぬいぐるみは取れなかったけど、本当に本当に楽しかった。


悠希とゲームセンターで盛り上がれるなんて思ってもみなかったし、プリクラを撮りたがったのだって奇跡に近い。


こんな素敵な奇跡が舞い降りてきたら、姉の元に行く決心がにぶりそうだ。


「そろそろ帰ろうか」


本当はもうちょっと悠希のはしゃぐ姿を目に焼き付けたいけど、痩せてしまった体はエネルギーがあまり無く、ふらつき出してきつい。


「よ~し、帰るか」


悠希の合図で車に乗り、戻るべき場所“二人の部屋”へ向かった。


部屋に着くとすぐ解放感にかられた二人は大の字になり、同時に床へ寝転がる。


疲れてしまっても、このまま1日を終わらせるのはもったいない。


楽しかった余韻を引きずり、悠希の近くに体を擦り寄せ、あたしは甘えた声を出した。


「抱っこ~」


「ったくしゃあねぇなぁ」


寝転がっていた悠希を無理矢理起こし、渋々座わらせ悠希の足の間に割って入り、そのままあたしは抱きついた。


「お前は…神だな」


「ええ。自己中万歳。神と呼べ」


疲れていると知りながらも、攻撃をしかけたあたしのふてぶてしい態度に悠希もお手上げだったらしい。


拳数個分の至近距離で見つめ合い、その体勢で二人は話を続けた。


「あっち行く時、俺乗せて行くか?」


上から見下ろす悠希の顔はどこか心配そうだ。


埼玉は今住んでいる場所から半端なく遠いのに悠希はあたしを思い、送ろうとしてくれている。


悠希の優しさは身に染みてたし、顔を見て出発したらますます決心がにぶってしまうそうで、見送りなんてしないで欲しい。


「遠いって。不安感が抜けないっていってもあたし一人で新幹線に乗る練習しなきゃ。倒れてもいい。チャレンジしたいの」


「そっか…」


「へへっ」


「う~ん…元気になって帰ってこい!」


「わかった!」


密着した体でもなぜか物足りなくなり、あたしは少しでも悠希の温もりを残したくなった。


泣きそうな顔で頬を両手で抑え、目を瞑り悠希の唇に深くキスをする。


悠希の一つ一つが愛しくて、グッと引き寄せたら目頭が熱くなって生暖かい涙が頬に流れた。