次の週の日曜日。


二人でゲームセンターへ行き、悠希は入り口をくぐるなり即座に両替をしだした。


あたしの元へ戻り、手には大量の小銭が握ってある。


「うお~なんじゃこりゃ!?」


「マネー。へへっ」


「マネーはマネーに間違いねぇけどよ」


「よ~し撮るぞ!歩ぅぅ~」


あまりのテンションの高さにあ然としていたら、悠希にグイグイ手を引かれ、プリクラの機械の中へ連れていかれた。


置かれてある機械でも最新の機種に入り込んだ二人は中の広さに驚き、口を開け、周りを見渡す。


「すげぇな」


「すげぇ…うちらの高校時代とは全く違う…」


ハイテク過ぎてついていけない年寄りな二人は、とりあえずお金を入れ、画面の指示通り背景を選んだ。


機械的な声でアナウンスされ、あたしが固まっていると、悠希は腰に手を回し、ペタッと顔をくっつけた。


「ほれ!ちゃんと前みて!」


悠希がプリクラに浮かれるなんてへんな感じで、笑顔の二人を撮り終えても張り切って何ショットもポーズを変え、楽しんでいる。


段々雰囲気に飲まれ楽しくなり、自然と声も大きくなる。


「悠希、うけるんだけど!」


「プリクラって楽しいんだな!?」


「今頃気付いたか!馬鹿が!ははっ」


プリクラの魅力に取りつかれた悠希は、隣の女子高生より声がでかい。


あたしは悠希に負けまいとサングラスを取り出し、ヤンキーの真似をして大袈裟なポーズをとった。


二人でキャーキャーやって盛り上がっていたら、突然悠希はあたしを後ろから抱きかかえた。


「これはちゃんと撮りたいから」


「えっ?」


「ん。なんか寂しいな」


耳元で聞こえにくい小さな声で呟く悠希。


いきなりこんな時に言うのはズルい。


笑えなくなっちゃう…


明るかった場は急に寂しいに染まり、しんみりしかけたが、悲しみに暮れた顔はしちゃいけない。


悠希の手元にはあたしのいい顔を残していかなきゃいけない。


寂しい顔はどうしても撮りたくない。


――行ってくるね!


涙が出そうなのをこらえ心の中でめいいっぱい叫び、あたしは自分なりの最高の笑顔を撮った。