「切れてないっつうの。行く前にプリクラ撮りに行こう!なっ!なっ!」


「お、おうよ!」


そう言うなり悠希はあたしの後ろへ周り、座った姿勢で抱きかかえ、頬を寄せた。


ヒゲがほとんどない悠希の頬は赤ちゃん肌で、スリスリされ、気持ちいい。


大好きな悠希の匂いも心地よく体を包み、あたしは悠希へ体を預けた。


「可愛くしていけよ~。それ見て寂しさ紛らわすんだから」


「オケ。めちゃめちゃ可愛くする!」


あたしは意外な展開に内心驚いたが、込み上げる笑いを堪えた。


悠希は今までプリクラを撮りに行こうといくら誘っても


「えぇっ!俺、撮りたくねぇ~写り良くねぇし」


そう言い、何度も断られていた。


だから自分からプリクラに誘うなんてよほど恥ずかしかったんだと思う。


そんな悠希のわがままが心から嬉しい。


いつもより強く抱きしめてくれ、苦しかったけど、それさえも嬉しかった。


「行くな」そう言われると思っていたのに、あたしを思い我慢する悠希。


抱き抱えられたまま、こんないい男はどこを探しても見つからないんだろうなとあたしは思っていた。