姉から電話が来た件について悠希にいつ切り出そうか悩む日は続いた。


悠希が部屋に来てもなかなか言い出せず、顔を見てはため息ばかりが出る。


あたしが思い詰めている姿を悠希は不思議そうに見つめていたが、言葉が出てこないあたしは違う明るい話題ばかりをして話をごまかしていた。


“離れたくない”という気持ちと“このままじゃダメ”という気持ちが入りまじって考えれば考えるなりため息しかでない。


一人で部屋にいれば過呼吸になりかけ、慌てて安定剤の薬を口に含む。


フィルターのかかった胸の奥には踏み込めなく、何かに怯えたあたしは突然血の気が引き、手が震える。


頭ではわかっていても、気持ちが追いつかない。


こんな体、いらなく感じてしまう。


あたしはとにかく悠希と離れたくなかったんだ。


毎日毎日自分の心の葛藤は続き、自問自答を繰り返す。


姉の所へ行かないでずっとこのまま悠希に迷惑をかけっぱなしでいいのか。


悠希もさすがにくたびれてしまうだろう。


でも、どうして離れたくない。


自分はどうすればいい?


変わりばえしない苦痛の日々を思い返しては、自分に問いかけて悩む。


しかし、もう悩んでいれないくらい極限まで悪化していたんだ。


このまま誤魔化し続けたら誰にも打ち明けず、死んでしまう。


間違いなく、自ら命を絶ってしまう。


姉の元に行って結果が出ればあたしの為になり、悠希の為になる。


「普通の生活に戻る」


どんなチャンスでも、逃すわけにはいかなかった。


医者も環境が変われば変わる場合もあると言っている。


きっかけがあれば変わるかもしれない。


二人の赤ちゃんもいつか欲しい。


保証などどこにもないが、このきっかけにすがるしかなかった。


地元を捨てるしかなかった。


夢を胸に抱き、自分の気持ちを奮い立たせる。


そして、あたしは悠希に話す決心を固めた。