「ああっ!落ちそう」


クレープの中に包まれたクリームがはみ出て落ちそうになり、つい焦って勢いまかせに悠希目掛け、無理矢理クレープを口に押しつけた。


「ふごっ」


「ありえねぇ!うける!あははははっ」


口に詰め込まれもがく悠希の顔が傑作で、あたしは手を叩いて笑った。


「歩ぅ~ひでぇ」


「マジうけ~ははっ。ごめんごめん」


人差し指の指先で悠希の唇を拭い、指についたクリームを舐め、ふざけて舌を出し「ごめんなさい」の合図。


「まあ、いいや」


そんなあたしを見て、悠希はモゴモゴしゃべり顔を赤らめていた。


一つのクレープ。


だからこんなに楽しめたんだ。


二つだったら各自が食べて「おいしかったね」で終わってしまう。


この演出は偶然なのだろうか。


悠希はこうなるとわかってたのかな?


二人で食べるクレープの意味を…


帰りの車内も二人の興奮は覚めやらなかった。


「なんか充実したいい一日だった。悠希ありがとね」


「俺も楽しかった!予定外だったけどブレスも買えたし」


「えっ!買うつもりなかったの!?」


運転する悠希を見ると、いたずらっぽく微笑んでいる。


「まあ、あれだ。あれ。それよりさ、歩のネックレス貸して」


「あれってなんだよ」


「気にするな。いいからネック♪」


「あいよ」


言われるがままいつも首にしていた金にカルティエの三連リングを通したネックレスを手渡すと、悠希は左手で車のバックミラーにスッと下げた。


「おおっ!かっけぇじゃん」


「おおっ!いいねっ」


殺風景な車内にあたしのネックレスがいい感じに味を出す。


――これを下げとけば悠希は毎日車に乗るから一緒だね


そんな事を思い、揺れるネックレスに見いる。


町ゆく人に車を走らせ見せつけて欲しかった。


~歩の彼氏です~


気付けば好きからいつの間にか愛に変わっていた悠希。


あたしの愛の証だからネックレスを首に戻さず、車に下げておく事に決めた。


車で二人のアパートへ向かう間、悠希に買って貰った化粧ポーチの袋を抱き抱え、あたしは幸せを噛みしめていた。


こんなに楽しく、こんなに心から嬉しいプレゼント。


あたしはこの1日を一生忘れはしない。


そして、一生君しか愛さない…