「悠希。超いい…」


「最高にいい買い物だ!」


「いや、そうじゃなくて…」


「はん?」


悠希はあたしの遠回しの台詞に困ったのか首を傾げる。


あたしはブレスレットではなく、真っ直ぐ悠希を見つめた。


「なんでもない!」


「意味わかんね~はははっ」


悠希は気分が乗っていたせいか、なんでもありの笑顔を見せる。


あたし的にブレスレットも凄くいい買い物だったが、それ以上の買い物をしたんだ。


悠希の嫌になる眩しい笑顔と、あんなにたくさんある商品の中で二人が同じ物を選んだ喜びを。


悠希が彼氏じゃなきゃ、あたしは幸せを感じれない。


悠希が幸せって奴を教えてくれたんだ。


そして互いの買い物が終わり、二人は満足して手を繋ぎ、アーケード街を歩いた。


都会染みた街並みに心奪われ弾む足。


ちょっとパニックの薬が切れかかって不安もよぎるが、そんなの気にしてらんない。


全力で楽しむんだって思いが自然と病気なんか吹き飛ばしてくれた。


そんな中、前に進むたび小さな店が建ち並ぶ一角から甘い匂いが流れ、鼻に立ち込める甘さが強くなってきた。


その匂いにつられ周りを見渡すと、古びたクレープ屋を発見した。