つられて天井を見た春斗は軽く頷き、立ち上がった。


「歩はいつも酒臭いよな~毎日飲み過ぎなんだよ。二日酔いじゃ立つのしんどいだろ。ほれ、手よこせ」


差し伸べられた春斗の手に掴まろうと手を伸ばしたら、手首を掴まれ子供を扱うように上へ引っ張られる。


「うおっ。力持ちさん」


ちょっと焦ったが、立ち上がるのがしんどくてそのまま春斗の腕に寄りかかり服を掴かんだ。


「ってかさ、また痩せたか?お前細い通り越して薄いぞ。大丈夫か?」


明るかった春斗の表情が心配そうな声と共に曇る。


人に弱味を見せれないあたしは


「生きてっから大丈夫。歩がつえぇのお前知ってるべ?」


心配かけまいと強がり、余裕の笑みを浮かべた。


突然呼吸が荒くなったり、立ち眩みがひどいなんて春斗にですら教えられない。


誰にも心配はかけたくないし、弱さを見せるのは格好悪い気がするから…


「男みてぇな根性は認めっけど、周りも急激に痩せたって言ってっぞ。今もフラフラじゃんか」


「大丈夫って言ってんだろ!!何度も同じ事言わせんな!しつけんだよ!!」


あたしは可愛げなく眉間にシワをよせキツイ言葉をいい放ち、春斗の優しさを振り払う。


「はいは~い。何も言いませ~ん。姫様を俺の部屋にお運びしま~す。ほれ。大事な携帯忘れんな」


春斗は何を言っても無駄だと悟ったのか、わざと変な顔を作り返事する。


床に落ちていた携帯を拾いあたしに手渡すなり、さりげなく体を支え、春斗の部屋へ連れていってくれた。


“♪~♪♪”


部屋に着き、ソファーへ腰掛け横になろうとした時。


手に持っていた携帯が鳴り、胸がギュッと締め付けられる。


たぶん慶太さんからの返事だ。ドキドキだぁ


いきなり肩が落ちる内容じゃないか、恐る恐る受信されたメールを確認する。


『俺も楽しかったよ。急なんだけど今日歩ちゃん仕事終わったら会わない?』


奇跡が舞い降りた瞬間、今起きている現実が信じられず、口元に手を当て画面に見入ったまま固まってしまった。


まるでまっさらに戻ったようなピュアな自分。


恋に落ちるには、時間など本来必要ないのかもしれない。