今まで関わってきた男達は


「買った物、大事にしてな」


「よかったね。うれしいだろ?」


「これ欲しかったんだろ。買ったんだからなんかご褒美くれんのか?」


何かを求めてきたり、いかにも買ってやりましたを全面に出す奴ばかりだった。


なのに逆にこっちへ気を使う悠希タイプと会った事はない。


悠希の横顔を見て、あたしは悠希の凄さを改めて感じていた。


「大変お待たせしました。こちらが商品となっております」


「どうも~」


店員から紙袋を手渡された悠希は、挨拶して商品を受け取り椅子から立ち上がると、あたしの手を引いた。


「はい。次ティファニーいっちゃう?」


「えっ?ティファニー?」


「うん、行こうよ。どんなもんか行きたくない?」


「気にはなるけど…う~ん…」


「気乗りしない?」


「うぅん。いっちゃうか!!」


「よし。行くぞ!歩、手!」


予定にはないプランに戸惑ったが、この際楽しんでしまえと悠希に賛同する。


スキップしたり、繋いだ手を大袈裟に振ったり。


二人はきらやかな道をひたすら歩く。


デートらしいデートに胸は高鳴り、笑い声が絶えない。


店に向かって歩いてる間も悠希は化粧ポーチについて何も触れず、笑顔を見せてくれた。


悠希のかっこよさに頭は下がり、お手上げ状態だ。


悠希にとっては当たり前なのかもしれない。


普通なひとこまかもしれない。


でも、自分の中で男という生き物は“恩着せがましい裏切り者”


そう映っていたから悠希の言動が未知なる生き物を見てる感覚に近い。


世の中の男がみんなこうならこれが当たり前になって、逆に女は幸せを忘れてしまうのか。


あたしは腕を組み、悠希へ寄り添い、世の中の幸せを独り占めした気分になっていた。