約束の日曜。


二人でヴィトンの正規店に向かうと店内はたくさんの人で混雑し、商品を見に行ったのか人を見にいったのかわからない状態だった。


高級感のある革で施された椅子や、厳重に隔離された商品。


身なりのきちんとした店員。


数名ガードマンがいて、馬鹿っぽいギャル風な服装をしていたあたしには場違いな場所だ。


立ち往生して目をまわしていると、悠希は忙しそうにしている店員をつかまえた。


「すいません。化粧ポーチありますか?」


「はい、ございます。こちらにお座りください」


二人は誘導され革の茶色いイスに座り、白い手袋をはめた店員が裏から丸みのある物と角張った物を何点か持ってきた。


「これだよな、歩が欲しそうにしてたの」


悠希は雑誌に載っていた物をものの見事に指さし、同意を求める。


それはあたしが欲しかったその物。


生唾が出るほど、欲しかった物だ。


「これだけど…」


ここまできてポーチを買わせていいのかやっぱり迷ってしまい、下を向くと


「んじゃ、これください」


迷いを打ち破り、躊躇なく悠希は店員に買う意志を伝え、カードを財布から取り出した。


「俺、カードで買うから。カタログは自分で買えよ」


「えっ、カタログ?あ~カタログ!」


店にくる前、あたしがカタログを欲しがっていたのを悠希は覚えていた。


足を振り、子供みたく前後し、こっちを見て微笑む悠希。


悠希のペースに流され過ぎて、あたしは親の後を着いて歩く小鳥みたいだ。


「申し訳ありません。こちらの紙に記入お願いします」


悠希が店員に紙を手渡され、書類に記載してる間に目当ての商品は頑丈に包装されていく…


あたしは店員の姿に見入りつつも、なぜ悠希は安いカタログをセットで買ってくれないのか考えていた。


――なんで安いのに一緒に買わないんだろ。金ないわけじゃないし、ケチな奴じゃないもんな…ゲーム買うだの買い物行ってもいっつも自分から出したがるのに…もしかして、あたしが迷ってるのわかって少しでも気つかわせないように自分で買えよって…


悠希は知ってたんだ。


あたしが変に気を使う子だって。


だから悠希は空気を察し、そうやって気持ちに負担をかけないようにさりげなく買わせたんだろう。