悠希は家族の為に家を建て直す夢があると語っていた。


貯金もちゃんとしていて、夢を現実にする努力も惜しまない。


そんな悠希だから、あたしは自分の為に無駄なお金を使わせたくない。


それに悠希はいつも言っていた言葉がある。


「家族が大事なんだ。俺が守るんだ」


耳に張り付いて離れないこの言葉。


家族から電話がかかってくると目の前で必ず出る。


父親がわりの悠希は自分なりに責任を感じていたんだと思う。


俺が守らなきゃって。


俺が父親だって。


「母親は1人で俺達を育てあげたんだ。だから少しでも楽させてやりたい。家の力仕事は俺が全部するべきだし…俺は継がないけど家は自営業で店もやってるから店も建て直してやりたいんだ」


家族に対してやきもちが妬けてしまうくらい家族を愛してるのが伝わってくる。


年頃の青年は恥ずかしがらずに背筋を伸ばし、あたしに投げかけていた。


悠希はとても真っ直ぐで、自分とは違う世界にいる清い人で。


だから負担になっちゃいけない。


他の男に同じ事をされたら当たり前と思うのに、悠希は別。


悠希はあたしにとってとても大切な人。


そんな複雑な気持ちを抱えながら結局、約束の日を迎えたんだ。