「パニック障害か…。おまえ、すげぇ頑張り屋だもんな…」


「頑張ってなんかいないよ…」


「いや、見てるこっちがコイツ大丈夫かって思うくらい頑張ってる。でもさ、おまえは人に甘えないって言うか、自分でやろうとして頼らないから疲れるだろうなって思う」


あたしは返す言葉が見つからなくて下を俯き、下唇をギュッとキツく噛んだ。


何か言葉を発したらまた意地を張り、本心を伝えられない気がするから。


思ってもいないのに平気なフリをまたしてしまいそうだから。


膝に乗せている自分の手は小刻みに震え、握った拳の上に涙が落ちてしまった。


「治そうな」


「えっ?」


「一緒、治そう」


そう言うと悠希はあたしの涙を指先で拭い、頭を抱えるように強く抱き締めてきた。


大好きな


大好きな匂いが、いつもあたしを優しく包んでくれる。


「治したいよぉお…」


「大丈夫!必ず治るから!!なっ!俺がいるから」


悠希の腰あたりにある服を掴み、抱きついたままあたしは声を押し殺し泣いた。


堪えれば堪える程息が苦しくて鼻に力が入り、逆にヒクヒク言ってしまう。


「おまえ本当可愛いな」


そんなあたしを見て悠希は笑い、頭を撫でてくれる。


「あの〜〜いいかなぁあ」


二人がやり取りをしてる間にカルテを手にした看護師が近くに寄ってきて、気まずそうに声をかけてきた。


会計後、薬を貰いに行く説明をしてくれ、あたしと悠希は精神科をあとに、会計受付へと向かう廊下を歩いた。


「歩」


「ん、何?」


「愛してる」


「へ!?」


「マジで愛してる」


突然愛を伝えてくる悠希に拍子抜けしてしまったけど、心地良くて、本当に嬉しかった。


悠希があたしの背中を押してくれたから


悠希が黒の世界から引っ張り出そうと動いてくれたから


だからパニック障害と戦っていこうと思える。


「悠希」


「ん?」


「あたしも愛してる」


「知ってるぅう〜〜」


二人で交わす愛してるのやり取りはむず痒くなってしまうけど、嘘なんて何処にもなかった。


「本物」


その言葉が一番適してる気がする。


この日あたしは悠希の存在がいかに自分に必要かを再認識した。


それと共に、やっと答えに辿り着き、自分がパニック障害と言う未知な病気だった事を知った。


これからが本番


これからが戦いなんだ…