当たり障りのないメールを作成し、満足してそのまま保存した。


春斗の視線を感じて表情を確認すると、心なしかつまらなそうにしている。


「ねえ。これでいいんでない?」


あたしは目じりを下げて悪魔の微笑み浮かべ、春斗に携帯画面を見せもせず、グイグイ頬に押し当てウケを狙った。


「イテテテ!お前はなんなんだ…ったく俺には何が何だかよくわかんねえけどいんじゃね?」


春斗が普通に返事してきて構い損の気分になったが、諦めず食い付く。


「春斗ってさぁ、なんかおもしろだよな~。いい奴過ぎてマジしばきたくなる」


「俺はぜんっっぜんおもしろくねえ!!」


そう言うわりに春斗は満更でもなさそうに照れ、鼻の下が伸びている。


その姿がなんともアホっぽく、ツボに入り、あたしはなぜか満足してしまった。


「お前…キモッ」


「キモッって!?歩なんて俺より年上でババァじゃんかよ!クソババァ」


「たかが二歳差でババァかよ!んじゃ歩の年上はみんな死んでんな!」


「あぁ言えばこう言う!うるせぇ口、摘まむぞ!」


「なんだよ腐れハゲ!触んじゃねぇ!」


春斗が手を伸ばし、あたしの上唇の先を本当に摘まみそうになり、手をおもいっきり叩きつける。


低脳な言い争いをし、夢中になり過ぎたあたしはとても大切な事を忘れていた。


「ってかメールだよメール!お前なんか構ってらんねえ!!」


慶太さんに送る為に保存しておいたメールを思い出し、近くにあった枕を春斗の顔面目掛け投げつけ、携帯を握った。


「ぶっっ。枕投げるなんて有りかよ!サッサと送れや!バカ女!」


春斗は顔を赤らめ負けじと枕を投げ返し、腕に当ててきた。


「全く痛くぬぅああ~い。はぁ。ど~れ慶太さんに歩ちゃんのラブメール送信しなきゃ」


保存しておいたメールを画面に出し、額に携帯を着け


いい返事返ってきますように…


目を瞑り、願いを込めて慶太さんにメールを送信した。


「お前何やってんの?女じゃねんだからそういうの似合わねぇな」


「うるさい!かろうじて女だ!まだ酒抜けてねえから酔っぱらいなんだよ!胸焼け中っつう事でおめぇの部屋で介抱しろ」


天井を指さし、春斗の部屋へ移動しようと促す。