「君の気持ちがどこにいってるか、どんな状態なのかさっき紙に書いた内容で傾向がわかるんだがまず結果から言うよ。僕は今まで長いこと精神科医をやってきたけどこんな結果は見たことがないんだ」


「えっ?どういう意味ですか?」


「単刀直入に言えばあなたはとてつもなく怒りだけが強いね」


「怒りですか?」


「そう怒り。他は全て正常なんだ。言葉は悪いけど人を殺してしまうくらいずば抜けて怒りが凄い」


「怒り?人殺しと同じレベルって事?何言ってんの?あたしおかしくないよ!!つうか意味わかんない。人を殺してしまう怒りって何!?」


物珍しそうに紙とあたしを交互に見る医者にカッときてつっかかっていく。


いかにもこの世の生き物じゃない扱いをした視線。


殺人者。


犯罪者。


いつかコイツはやるって目が語っている。


「ん~ん。まず体の症状を正直に言って」


冷静さを失い、かかっていくあたしに医者は困ったのか口元をへの字に曲げる。


その口の曲がり具合いや表情がまた怒りに油を注ぐ。


「息苦しさがあります。手の震えが止まらなくなったり、広い場所や狭い場所に行くと目眩がして死ぬんじゃないか怖いんです!これでいい!?つか、はぐらかすなや!」


早口に声を荒げ、怒りをあらわし、簡単だが現状を医者に話した。


すると医者は微かにため息をもらした後、お構いなしに看護師に合図を送り、手渡された分厚い本をおもむろにあたしの目の前で開き話し出した。


「このページ見てみて。パニック障害って書かれてあるでしょ。この部分に死への恐怖、息苦しさ、目眩、全部当てはまるよね。あなたはパニック障害」


「パニック障害?」


「繊細で生真面目な人がなりやすい病気なんだよ。あなたは甘え下手みたいだし人に頼らないみたいだし。きっと一人で頑張ってたんだね…うん。もう楽になっていいよ」


「頑張ってなんか…あたしがパニック障害…」


“頑張り過ぎんなよ”


その時、悠希が言っていた言葉を思い出していた。