しかし、今のあたしにとってそんな言葉は気休めにしかならず、不安は募るだけだ。


「山本歩さん」


「はい」


「この紙に“はい・いいえ”って書いてあるから正直に丸をつけて欲しいの。悩まずに感じたままね。終わったら私に渡してください」


看護師に呼ばれ、渡された数枚綴りの紙と鉛筆。


あたしは悠希の隣に座り、言われた通り偽りなくありのままの状態に丸を付けた。


“死にたくなりますか?”


“孤独を感じますか?”


“誰かがあなたの邪魔をしますか?”


そんな暗い質問ばかりが紙面に並ぶ。


嫌なのに自然と丸が付くのは「はい」の文字…


隣に座る悠希は内容が気になるのか紙を横から覗き、質問内容を確認してるようだった。


「死にたいかだってさ」


「歩がそう感じたらはいに丸でいいんだ。嘘なしで書け」


「死にたいってか産まれたくなかったなんだけどね」


「歩は死にたい?」


「死にたいが9割しめてるかも」


「そっか…ほぼ死にたいなんだな…」


寂しげに呟く悠希をしりめに最後までキッチリ記入し、あたしは看護師に紙を渡した。


渡してからあまり待たず数分後。


「診察室にどうぞ」


目の前まで看護師が迎えにきてくれ、悠希を待合室に残し、緊張のあまり振り返る事も出来ず、連れられるがまま診察室へ向かった。


「はい、こんにちは。山本さん、ここに座って下さい」


医者は小柄なじいちゃん先生で、穏やかな口調と顔付きにほっと胸を撫で下ろす。


無関心な医者じゃ、うまく話せない。


冷たくかわされたら気持ちなんて預けられないから。


「そんなに緊張しなくていいよ~ここの椅子にどうぞ」


「はい。すいません」


慣れない空間にたじろぎ、手招きされた椅子にたどたどしく腰掛け、背筋を伸ばす。