「精神科なんて怖いよ…」


「怖くない!俺がいる!」


「でも…」


「行くよな?俺がいれば行けるよな?」


「…」


「行こうよ。歩。信じて着いてこいよ」


「行って…」


「行って?」


「行って…み、る…」


手首を離し、あたしの目をじっと見つめる悠希の目があたしに一筋の光を導き出した。


どれが正しいなんて答えは未知。


そんな未知数な階段を一歩進んだ瞬間だった。


「あ・ゆ・むぅ~」


「怖いよぉ嫌だよぉ。悠希、歩どうしたらいい?どうしたらラクになれるのぉぉ!」


体を引き寄せられ悠希の胸に顔をうずめたあたしは我を忘れ、ワンワン声をあげ、涙が渇れ果てるまで泣き続けた。


震えて震えて


悠希の腰に腕を回し、必死にしがみついて…


悠希は頭をソッと撫で、無言で泣き止むのを待ち続けてくれた。


大人の悠希と子供なあたし。


同じ年なのにこんなに差がついてしまったのは、心の強さの違い。


守るものが。


守るものの重さが違いすぎたから…


掴まれて赤く跡が付いてしまった手首は「二人の決意の証」


この痛みは優しさのつまった愛情の痛みだと身に刻み、あたしは感じとったんだ。