「これください」


あまりのお菓子の量に店員はたじろぎ、腰が引け驚いた顔で固まっている。


「あの…これ全部ですか?」


「はい。全部お願いします!」


あたしは腰に手を当て「どうよこれ」と鼻の穴を広げ自慢気にポーズを決める。


店員はそんなあたしを見て吹き出しそうになっていたが、咳払いでごまかしていた。


お菓子を手にバーコードを一つ一つ読み取り始めた店員。


さりげなく二人をチラッと見ては、何か言いたげに口元を動かす。


あえて声をかけず知らんぷりをしていたら、店員はいきなり申し訳なさそうに声をかけてきた。


「あの~こんなに大量のお菓子を買うってお子さんにですか?」


「お子さん?へっ?誰の?」


「いや、まさか二人で食べるわけじゃ…ない…ですよね?」


この場には悠希とあたしの二人きり。


子供など連れていないのに不思議な事を言う店員だ。


「あの、あたし子供いませんよ?」


「あ、すいません。凄いお菓子の量なんでてっきりお子さんいらっしゃるのかと思いまして。でも見た感じお二人はめちゃくちゃ若いですしね。ふふっ」


ニ、三秒の間。


ちょっと待てよと頭は動く。


悠希との子供?えっ、夫婦!?


あたしは理解に困ったが段々状況を把握しだし、顔が熱くなった。


隣にいる悠希は肩を小刻みに震わせ、笑いをこらえている。


「お前なんだよ!」


「いってえぇ~」


照れを隠せなくて思いっきり力を込め背中を叩くと本当に痛かったらしく、顔をしかめた悠希。


「ざまあみろ!はははっ」


自分の照れを打ち消す大声で笑い、腹を抱える自分。