白く軽やかな羽根を連想させる初雪が街に降り注ぎ、空一面が冬を告げた。


赤や緑。


金銀の飾り付けがちらほら店頭を彩れば、もうクリスマスだ。


世間の浮かれた男女は恋人にあげるプレゼントを厳選しては、聖なる夜を過ごすらしい。


なのに、あたしは誕生日以外興味がない。


“クリスマス?知らねぇ奴の誕生日祝ってなに浮かれてんだか”


冷めてるのかひねくれてるのか、周りのムードについていけない。


だから恋人とクリスマスを祝うなんて経験が全くなかった。


「お前って変わってる」


「可愛げねぇ女」


クリスマスシーズンに付き合ってきた男達に言われた台詞は決まってた。


そんな事情を知らない悠希は世間の流れに乗り、彼氏らしい台詞を吐く。


「ねぇ。クリスマス何欲しい?」


悠希はあたしの部屋でコタツに入り、目を輝かせクリスマスを楽しみにしている様子だ。


あたしには100パーセント不必要な行事なのに。


「えっ?クリスマスなんてしなくていいよ」


クリスマスはしないのが当たり前だと思い、何の気無しで平然と答える。


ずっと貫いてきただけに今更崩せないし、崩す気もない。


でも世間に反さず生きてきた悠希に、そんな諸事情は通用しない。


「お前さぁ。そういうのやめたら?いい加減つっぱねるの」


「つっぱねてないし。クリスマスの意味わかんねっ」


祝い系は絶対しなきゃいけないものじゃない。


あたしはしないのが当たり前だったからどこも間違ってないと思い、真顔で悠希に言った。


「俺が何かあげたいって思うのはおかしいか?」


「だっていらないもん。誕生日ならわかるけど…」


膨れっ面の悠希から目を逸らし、タバコを吸ってあたしも膨れっ面で反撃にでた。


「せめてさ~クリスマスっぽい食い物は食おうぜ」


それでも悠希は食い下がり、クリスマスをしたがる。


しつこくて正直かなりうっとおしい。


「本当にしなくていいってば!」


「お前、もうちょい素直になれよ!」


悠希はむっとした表情であたしにきつい口調で言葉を発した。


彼氏とクリスマス?何それ。あたしはそんな可愛げのある女じゃない。ってかあたしが変なの?


悠希と反したあたしの気持ちが変なのかさえわからない。


ここまで腹を立てている悠希を理解出来ず、正直困ってしまう自分がいた。