“ガシャン”


何かを落とす音が聞こえ見に行きかけたが、また怒られるのが嫌であたしはおとなしく寝ていた。


待っても待っても悠希が戻る気配は感じられない。


騒がしい音が台所方面で奏でられ気になる。


何をしているのだろうか。


早く悠希に来て欲しい。


待ち焦がれ、テレビにすら集中出来やしない。


何度も寝返りをうっては暇な時間を誤魔化す。


そうこうして時間を潰していたらやっと悠希が現れた。


「しんどくてもこれ食ってから薬飲めよ」


「はっ?」


悠希があたしの元へ近寄って来たと思ったら、手に持っていた食器を目の前に差し出された。


器にはバナナとりんごが細かく切られ、ヨーグルトがかけてある。


切られたフルーツの大きさなんていびつで、日頃包丁を握ってない感じがする。


でも時間をかけて作ってくれた悠希の優しさが何より嬉しい。


「俺ってやっさしぃ~♪」


「自分で言うなよ!」


凄く嬉しくて、恥ずかしくて、照れ臭くて


“ありがとう”の一言が言えない。


きっとあたしの顔はにやけてて、真っ赤だ。