真っ暗な外は、凍てつく風が全身を刺す。


窓ガラスに息を吹きかければ白い水滴がつく寒さ。


「ほら。寒いから早く乗れ」


悠希は助手席側のドアを開け、あたしを車に押し込み、さりげなく心配している。


シートも倒してくれ、横になると、車は家へ向かい発進しだす。


「帰ったら薬飲まなきゃな」


「薬嫌い」


「はい。ダメ~」


だいぶ調子が出てきて二人で冗談を交わしていると、明るい光りが目に飛び込んできた。


「うわっ、眩しい…」


手をかざし、光を遮って指の隙間から覗き見たら、煌々とした灯りを放つコンビニが目に入る。


「ちょっとコンビニ寄るな」


「あたし行かなくていいの?」


「お前は車に乗ってろ。すぐ来るから」


悠希は優しい声を出し、駐車場に車を止め、一人急いでコンビニに入って行った。


タバコでも買うのだろうか。


寂しいから、早く帰ってきて…


ついさっき起きた過呼吸の恐怖心が微妙に抜けきらず、一分一秒離れただけでとても寂しい。


悠希の様子が気になりコンビニを覗こうとしたら、悠希は数分でビニール袋を手に戻ってきた。


「ごめんごめん。どれ出発だな。早くちゃんと横になりたいだろ」


あたしを気遣い、車をゆっくり発進させ、スピードを徐々にあげる。


家に到着し、エレベーターに乗る間も悠希は体を支えてくれた。


悠希の果てしない気遣いには頭が下がる思いで一杯だ。


手に持っていてくれたバッグから鍵を出し、部屋に入るなりあたしはほっとして力が抜け、床に座った。


「こら!おんまえはぁ~まず寝てろ!」


「立つのイヤイヤ~」


「ったく世話がかかる奴だなぁ~」


顔を横に振り、甘えていたら布団を近くに引っ張ってくれ、すぐに寝せられた。


寒い部屋の暖房は悠希が付け、あたしは布団にくるまり、リモコン片手にテレビをつける。


「ここにあるフルーツ使うぞ」


「あいよっ」


悠希は台所へ向かうと声をかけたまま姿を消し、長い時間待っても戻ってこない。