好きだから別れて

「あっ。熱…風邪薬貰わなきゃ」


「もう少ししたら薬出来るらしいからそれまで寝てろ」


「うん」


あたしが処置されている間に悠希は熱があって病院に来た経緯。


その途中で起きた出来事を看護師に話していたらしく、二人は薬待ちをした。


「歩。どうだ?」


「ん、だいぶ落ち着いた。でも怖い」


心配そうな悠希の顔があたしにはたまらなく、いかに状況が壮絶だったかをうかがわせる。


過呼吸を起こし、こんなに苦しい思いをしたのは人生において初めて。


高熱を忘れさせる苦しさは半端なかった。


「歩、興奮してた時、看護師が袋使っただろ。あれって苦しくないのか?」


「その時は苦しかったけど…でも、徐々に嘘みたいに痺れとれたよ」


「んじゃ、これから対処法わかるんだし大丈夫だよ。俺もいるしさ」


“シャー”


二人の会話はカーテンの音で遮られ、看護師があたしの様子を見に来てくれた。


「もう大丈夫そうだね。先生が落ち着いたら帰宅していいって。これ薬ね」


「ありがとうございます」


袋に入る熱冷ましを悠希が受け取り、あたしは体をゆっくり起こす。


「無理そうか?」


「大丈夫。歩ける」


「落ち着いたし、じゃ、そろそろ行くか?」


「うん」


立てる自信なんてないが、差し伸べられた手に掴まり、ベッドから降りた。


「あっ、精算は!?」


「ふふっ。後日でいいのよ」


看護師に急いで聞くと、到着した時とあまりにも変わり過ぎているあたしの変化に笑っている。


ちょっと恥ずかしい。


「ありがとうございました」


「お大事にね」


照れを隠し、悠希と二人で頭を下げた後、悠希に支えられながらあたし達は車へと向かった。