「あっ、あっ」


「もう少し寝ていきなさい」


淡々とこなされた医療行為だったが、怒りすら起きない。


体全体に力を入れすぎたせいかうまく体が動かず、無気力に近く、力も入らない。


もしかしたら、注射で注入された薬がそうさせたのかもしれない。


動きを封じられたあたしは、なぜかものの数分で緩やかな眠気にみまわれ、時間が経つにつれ、嘘みたいに興奮が少しずつおさまりかけた。


時間の感覚がない。


自分の中ではそんなに時間が過ぎた気はせず、カーテンで隔離されたベッドに寝させられている。


いかにも病院っぽい作りの天井をぼんやり眺める自分。


「彼氏さん。彼女だいぶ落ち着いたから入っていいよ」


紙袋がはずれると、別の場所で待っていていくれた悠希が白いカーテンから顔を出し近寄ってくる。


「大丈夫か?苦しかったな…」


「あたし…あたしね」


「ん?」


「死ぬかと思った…」


悠希はゆっくり椅子に座り、ベッドで横になるあたしの手を両手で包み、握ってくれた。