「おかえり~」


「ただいま」


「お前なんつぅ声してんだ!ありえねぇ〜ガラガラじゃん!」


声どころじゃない。


時間が経つにつれ体は熱をおび、横にならないといれない高熱状態だ。


「あれぇ~なんか熱あるみたい」


本当は出勤前に熱が微妙にあると知っていたが、熱があって仕事に行っていたなんて悠希に知れたら何か言われたあげく、怒られかねない。


今熱が出始めたかのように芝居をして、あたしはつじつまをあわせた。


部屋に体温計など置いてない。


熱を計りようがなく心配した悠希は、何度も額に手をかざして熱を確認してくる。


「さっきより熱いよ!救急やってる病院に連れてくから早く車に乗れ!」


おでこを合わせひんやりした気持ち良さを感じていたら、幸せに浸る時間も無く、悠希の最終判断はくだった。


「え~っ。病院行くと薬が…」


あたしは薬を飲みたくないという幼稚な理由で嫌そうな声を出し、病院へ行くのを拒んだ。


すると悠希はちょっと怒り口調で「ぐずぐず言ってんな。早くしろ」と言った。


「…はぁい」


結局好きな相手にはどうあがいても勝てない。