「ほら。寝ちゃう前にさ」


「ぅんん~?」


「鍵だよ鍵。お前がか~け~ろっ」


「…鍵?鍵なら悠希が」


「いいから、歩がかけろ」


合い鍵を渡してあるのにわざわざ鍵をかけさせようとする悠希。


無用心に鍵もかけずに生活していたズボラなあたしに、鍵をかける癖を今すぐにでもつけさせたかったのかもしれない。


「じゃ、早く寝ろよ」


「うん。悠希も即だよ」


「バァ~カ。運転しながらでも寝てやるっつの」


「馬鹿はおめぇだろ。事故るっつの」


「ははっ。じゃ行くな」


「おう。マジ気をつけてな」


悠希が扉を閉める。


と同時にドアノブへ手を伸ばし、鍵をかけ、あたしはちゃんと約束を果たす。


悠希はしっかり閉じられた鍵を確認したのだろう。


ゆっくりと歩き出した足音が廊下側から聞こえる。


遠くへ


遠くへ


ゆっくり足音が消えていった。