「俺、今すぐ帰れとか言われても帰んないから」


「ダメだよ!数時間後仕事じゃん。早く帰って少しでも寝て!」


「仕事…だよな…じゃ一時間だけいさせて。いいよね?ってかそうするから」


口を開かず深く頷き、OKサインを出したら、悠希は壊れ物を扱うようにあたしの体を支え、布団まで運んでくれた。


布団に入った二人に会話などなく、背後に回り抱きしめる悠希にあたしはもたれかかる。


どうしてこうなるんだろう。


あたしは何をしてんの…


悠希が数時間しか寝れないのにこんな時間に呼び出し、多大なる迷惑をかけてしまい、申し訳なさでいっぱいだ。


なのに悠希は知ってか知らずか何も問い詰めず、無言で優しく髪をひたすら撫でてくれた。


華奢な指が髪に触れる。


そのたび心地よくなってきて、段々、段々、眠気が襲ってくる。


約一時間


休まずずっと撫でられた髪…


気付けばフッと寝落ちしかけ、上まぶたと下まぶたがくっ付き出している。


「あゆ…あゆむぅ…」


耳元に悠希の声が流れてくる。


ふんわりしてて


耳障りじゃなくて


なんか懐かしい。


大好きな


高い声…


そして、遠退いてた意識がゆっくりゆっくり戻ってきた。


「歩?俺そろそろ帰るぞ。おい。歩?歩ぅう~」


「うぅ~ん眠い…」