分厚い壁を挟んでも漏れてしまう凄まじい怒鳴り声をあげた悠希。


悠希が怖い。


「…」


どうしても真実に触れたくなくてあたしは顔を反らし、返事もせず床に視線を移し、黙りこんだ。


「もしかして携帯にその男の番号あんのか!?」


「いや!ムリ!かけない!絶対かけない!」


ハッとし、手に持った携帯をとっさに握りしめ、胸元に引き寄せる。


それに気付いた悠希は携帯を奪い取ろうと手を掴んできて、携帯の取り合いになった。


「なんでその男かばうんだ!お前そいつとなんかあんのか!?」


かばうつもりなどない。


ただ知られたくない。


そいつと愛なしの体の関係があったなんて。


あたしの汚い過去を晒したくない。


「いやっ。離して!なんもない!客だよ客!」


見抜かれるもんか!


悠希にばらすもんか!


もがくなり二人の争いはより一層激しくなり、悠希の怒りが上昇していく。


計り知れない怒りをあらわにする悠希は目が違う。


いつもの優しさからかけ離れ、怖い目をした悠希。


「いいから!お前そいつの番号わかんだろ!?早くかけろ!」


「なんと言われようがかけない!しつこい!ただの客だからいいの!」