悠希の家からたった20分の距離なのに、到着を待つ時間は長い。


うずくまった手足の先は冷えきり、指先で涙を拭うたびとてもひんやりして冷たい。


このまま凍え死ねたらあの件を伝えずに済むのに…


あたしは自ら招いたいまわしい出来事を悔やみ、消えてしまいたくなっていた。


こんなに弱々しく、みっともない姿も悠希にさらしたくない。


物思いにふけり、自暴自棄になっていると廊下側から足音が聞こえた。


“ガチャガチャ”


急かす激しい鍵音が耳に入り、扉に目を向けると


「歩!!」


悠希は心配と怒りが交ざっている顔で扉を力一杯開けた。


「誰にやられそうになったんだ!そいつわかる奴か!?」


悠希は興奮して近くに駆け寄り、あたしの肩を激しく揺する。


怒った顔がとても怖くて凝視できない。


「なんともないから!!明日仕事でしょ?顔見たら安心した。大丈夫。本当に大丈夫!!」


うずくまった場所から一歩も動けず、腰が抜けている状態なのにあたしは意地を張った。


助けを自分から求めたくせ、こんな時ですら強がりが邪魔をしたんだ。


あたしは大丈夫。


一人でも大丈夫なんだって…


「いいからよ…いいから誰だ。誰なんだ!!」