身に付ける時計やブランド品は勝手に客が貢いでくる。


騙して騙して根こそぎいただく。


ダメになりゃ新規の客に的を絞ればいい。


約束なんてあってない世界なのだから、こんな馬鹿げた世界に何の期待もしない。


「歩ちゃんすんげぇ痩せちゃって…栄養足りないんだから飯ごちそうするよ。近々いかない?」


ここまで来ればあとは簡単だ。


「歩、食い物より酒のが好き~どうせお腹満たすならこっちの方が嬉しい~」


今にもあきそうな高級酒の瓶を片手にもう一本の催促。


「ん~やられた」


作戦勝ちを決め、売り上げに繋がる勝利の美酒を浴びる優越感。


最高に気分がいい。


「うんまぁ~やっぱ高い酒は味が違うわ」


「だろ?俺、他の子の時は絶対こんな酒いれねんだぜ?ってか歩ちゃん以外興味ないし他の子つかなくていいし」


「またまたぁ」


「いやマジで。ママにも歩ちゃん以外付けなくていいって言ってるからさ」


「味なんてわかんないし、クソまずい酒によく金なんてだすよな」なんて冷めた感覚で客を見つめ会話を進めていたら、やたら熱い視線が遠くからあたしに向け注がれた。


髪をかきあげるフリをして視線を追いかけ見たら、常連も常連の西野君と会社の後輩がこっちを見ている。


ハッとしたあたしはすぐに視線を断ち切り、客に微笑み、気付かぬそぶりをした。