…19歳の時。


親に愛されず愛を知らないあたしは結婚がどういうものか知りたくて、興味本位で籍を入れた過去がある。


籍は入れていたが、智也と二人で住んでいた時間は半年もなく、たった一年のスピード離婚。


離婚原因は智也の借金、浮気、暴力…


智也との結婚生活を考えると、今にも吐き気がする地獄のような日々だった。


あたしが下を向き、言葉につまっていると


「別にいいじゃん、智也の事なんて思い出さなくていいからね。今日は楽しく飲む為に来たんだからさ。は~い。一気、一気」


慶太さんはすかさずフォローを入てくれ、友達にグラスを手渡しだした。


「だな。楽しく飲まなきゃ損だ」


友達も凍り付いた雰囲気を振り払うかのように、音頭に合わせ一気飲みをする。


この人…超いい…


あたしは楽しそうにしている慶太さんの横顔を見つめ、胸を鷲掴みされるようなときめきを感じた。


散々男に愛を求め生きてきた「歩」なのに、この日ばかりは違ったんだ。


元々タイプだったのも手伝い、その時点で確実に慶太さんにノックアウトされていたのだろう。


胸元が温かくなる感じと表現したらいいのだろうか。


死んでいた感情が嘘のように息を吹き返し、自分の気持ちを抑えられなくなりそうだ。


目の前に座る慶太さんがどうしようもなく欲しくなりいてもたってもいられず、つい


「慶太さん。今度遊びませんか?」


あたしは恥じらいを捨て、まさに逆ナン状態な台詞を吐き、今までの自分には考えらんない行動にでていた。