「ちょっと……あなた達。ケーキ屋の前で
かき氷の話をしない。するなら
ケーキの良さにしなさいよ。宣伝になるから
それと掃除をサボらないの」
そう言って注意をされてしまう。
私と翔馬君は、お互いの顔を見合わせると苦笑いした。
怒られちゃった……と言いながら
掃除をそこそこに終わらせると今度は、
厨房のお手伝いだ。手を洗い消毒をすると
私は、イチゴを切るのを任せられた。
えっと……イチゴのヘタを取ってから
半分にすればいいのよね?
慣れない手つきでイチゴのヘタを取っていると
翔馬君は、メレンゲを泡たて器でカシャカシャと
かき混ぜていた。こちらは、慣れた手付きだ。
伊吹さんを見ると大きなボウルみたいな
形の機械に材料を入れていた。
すると機械は、グルグルと混ぜ合わせていた。
あれでスポンジの生地を作るみたいだ。
「混ぜ合わせる機械とかあるんですねぇ……」
「えぇ人数が少ないからこれを活用するのよ!
あれだとたくさん生地が作れるから」
そうなんだ……。全部手で作る物だと思っていたから
私は、驚いてしまった。
ケーキ屋さんの知らない情報を聞いた。
なるほど……機械で作ることもあるんだ。
生地が出来上がると機械から外しボウルを
スポンジの型に入れる。
そして熱した大きなオーブンにセットした。
その間にまた、材料を入れて機械で混ぜたり
生クリーム用にまた別の同じ機械でセットしたり
大忙しだった。
翔馬君の叔父さんは、ケーキの飾りつけをしていた。
さすがプロのパティシェだ。たくさんあるスポンジを
スルスルと生クリームで塗っていく。
その手は、速くて綺麗だった。
「うわぁ……凄い」
あんな素早く塗れるなんて。
ケーキは、大好きだが、まともにプロのパティシェが
作ったところなんて見たことがないし
どんな風に作っているのか知らなかった。
あんな風に作るんだ……。
関心しながら見ていると翔馬君が
「菜乃。見ているのは、いいが早く
イチゴのヘタを取れよ。
それだといつになっても使えないぜ」と言われた。
「あっ……いけない」