「捕り方ってのは何人だい?」

 重実が男に聞く。この離れの規模だと、あまり多すぎては返って邪魔になる。

「鳥居がおりますもので、人海戦術で抑え込もうと思ったのですが、それだと犠牲が多くなると言われまして、厳選して十人です」

 逃がさないことが大前提なので、この板塀の出入り口を固められればいい。

「十分だ。ついでに、あんまり中に入らないよう注意してくれよ」

 部屋の中で斬りあうわけにはいかないので、必然的にやり合うのは庭になろう。十人もこちら側の人間が散らばっていると、思う存分刀を振るえない。鳥居らはこちらの人間が傷付こうが構わないから支障ないかもしれないが、こちらはそうではないのだ。

「ではそろそろ乗り込むか」

 安芸津が、腰の刀を握りしめた。重実は首を伸ばして離れの障子を睨んだ。狐が、何かきっかけをくれるはずなのだが。
 そのとき、不意に離れの中が騒がしくなった。がしゃんがしゃんと、何やら膳をひっくり返すような音がする。続いて、「うわっ」「何だ?」といった戸惑いの声と、人の動く音。

「今だ! 行くぜ!」

 すかさず重実が立ち上がり、離れ目指して一直線に駆けた。一気に廊下に上がり、そのまま障子を引き開ける。
 その瞬間、鼻先を刃が横切った。障子を開けると同時に身体を反転させなかったら、突き出された刀に顔を串刺しにされていただろう。

「何者だ」

 刀を突き出した格好のまま、鳥居が口を開いた。

「へ、さすがだな」

 重実が障子の陰から姿を現した。鳥居の目が、僅かに見開かれる。

「貴様は……」

「覚えていたかい。あんたの闇討ちを阻んだんだものな」

 軽く言ったことに、北山が反応した。

「何だと? 鳥居、こ奴がそうなのか? ということは、小野派の刺客か」

 言ったものの、北山は座ったままだ。いきなり襲われても落ち着いている。