「とりあえず田沢の足元を揺るがして、艶姫様と真之介様の婚姻を進めてしまう。田沢を始末するのは、その後でもよかろう」
実子である艶姫の存在を公にし、且つ婿を取ってしまえば次期藩主の座はほぼ確定だ。それでも邪魔するようであれば、そのときに始末する。
「北山は口書きが取れればいい。捕らえればどんな方法を使っても、田沢との関係を吐かせてみせる」
この時代は自白が全てだ。故に拷問も平気でやる。
「我らは捕り方に紛れて踏み込む。人数はさほど集めないつもりだ。捕り方には米滋を任せるだけだしな」
「北山は、捕り方では抑えられないってことか」
重実が問うと、安芸津は、うむ、と頷いた。
「下手に北山に近付けば、捕り方に死人が出よう。奴は私が相手をする。そしてそなたには、鳥居をお願いしたい」
少し躊躇いがちに、安芸津が重実に言った。安芸津は重実の腕を見ていないので、実際はどの程度の腕前なのかわからないからだろう。ただ峠で伊勢たちを助けた、というからには、それなりだと踏んでいるのだ。
「まぁいいけど」
軽く、重実が受ける。それに伊勢が、ばん! と畳を叩いた。
「そんな軽く受けていいと思っているのですか! 鳥居は並みの腕ではありませんよ」
「おや、心配してくれんのかい」
「あなたがあっさりやられてしまったら、こちらの遣い手がいなくなってしまうからです。それに、安芸津様が北山と鳥居の二人を相手にしなければならなくなったら勝ち目はありません。安芸津様まで討たれてしまっては、遣い手といえる者は残りませぬ」
至極もっともな言い分だ。
実子である艶姫の存在を公にし、且つ婿を取ってしまえば次期藩主の座はほぼ確定だ。それでも邪魔するようであれば、そのときに始末する。
「北山は口書きが取れればいい。捕らえればどんな方法を使っても、田沢との関係を吐かせてみせる」
この時代は自白が全てだ。故に拷問も平気でやる。
「我らは捕り方に紛れて踏み込む。人数はさほど集めないつもりだ。捕り方には米滋を任せるだけだしな」
「北山は、捕り方では抑えられないってことか」
重実が問うと、安芸津は、うむ、と頷いた。
「下手に北山に近付けば、捕り方に死人が出よう。奴は私が相手をする。そしてそなたには、鳥居をお願いしたい」
少し躊躇いがちに、安芸津が重実に言った。安芸津は重実の腕を見ていないので、実際はどの程度の腕前なのかわからないからだろう。ただ峠で伊勢たちを助けた、というからには、それなりだと踏んでいるのだ。
「まぁいいけど」
軽く、重実が受ける。それに伊勢が、ばん! と畳を叩いた。
「そんな軽く受けていいと思っているのですか! 鳥居は並みの腕ではありませんよ」
「おや、心配してくれんのかい」
「あなたがあっさりやられてしまったら、こちらの遣い手がいなくなってしまうからです。それに、安芸津様が北山と鳥居の二人を相手にしなければならなくなったら勝ち目はありません。安芸津様まで討たれてしまっては、遣い手といえる者は残りませぬ」
至極もっともな言い分だ。