「人数は、あの量にしては少なかったな。お陰でこっちゃ大変よ。あんま人目につかないようにしてたし。まぁ仕方ねぇわな、今年は米不足で、それを補うための下り米なんだから、誰かに盗まれちゃ堪らねぇ」

「へー。あんた、詳しいな」

 感心してみせると、男は小さく舌打ちした。喋りすぎたと思ったのだろう。口を噤み、背を向ける。

「おっ、待ってくれ。ちょいと話を聞かせてくれよ」

「しつけぇな。何でそんなに聞きてぇんだ」

 やたらと荷のことを聞きたがる重実に、男は疑いを持ったようだ。さっさとその場を去ろうとする。だが重実は気にせず、当然のように言った。

「当然だろ。こっちゃ生活がかかってんだ。明日の飯もねぇ身なんだよ」

 ぴた、と男の足が止まった。まじまじと重実を見る。

「実はなぁ、昨日ここいらについたばっかなんだが、道中やられちまったみてぇでよ」

 ひらひらと袖を振る。

「は。一端に刀なんぞ差してるくせに、巾着切りにやられたのか。情けねぇ」

「そういうわけで、昨日から何も食ってねぇ。困り果ててここいらに来たら、あんたが荷下ろししてたってわけだ。米俵だって、その気になりゃ担げるぜ」

「どうだかな」

 相変わらず馬鹿にしたような物言いだが、先ほどよりも口調は柔らかい。無一文になった(ということにした)重実に同情したらしい。

「ま、米俵なんざ、そうそうねぇよ。今回は特別だ。城からお偉方が出張ってきてて、皆緊張してたしな。お前さんみたいな慣れてねぇ奴が、俵を一つ駄目にしやがって、えらく怒られてたぜ。慣れねぇことはするもんじゃねぇ」

「駄目にしたって? 大変じゃねぇか」

「そりゃ、大騒ぎだったぜ。おれは荷揚げをよくやるんだが、そいつは新顔だった。やっぱ慣れてねぇ奴は駄目だと思ったものさ」