二人はまず下り米が荷下ろしされたという港にやってきた。

「ここでわらわら人が入り乱れりゃ、多少の行動は目につかねぇな」

 荷を積んだ船が入れば荷下ろしの人足が駆り出され、多くの人が入り乱れる。今も船から荷を下ろす男たちが忙しく行き交っていた。

「この中に、米の荷下ろしに関わった奴がいるかもしれねぇな」

 荷下ろしの人足は、大抵日雇いだ。重労働だが金がいいので、体力に自信のある者には人気である。よく働く者は口入屋も重宝するので、同じ者を斡旋することも珍しくない。
 二人はしばらく様子を窺い、仕事が落ち着いたところを見計らって、重実が屈強な一人の男に近付いた。

「ちょいと兄さん。あんた、よくこの港で仕事してんのかい」

 重実が問うと、男はあからさまに不審げな目を向けた。

「何でぇ、お前は」

「へへ、見ての通りの食い詰め浪人で。割のいい仕事を探してるんだがね、ここの港の荷の出入りはどうかと思って」

 浪人、というわりには町人のような口調で、重実は頭を掻く。男は馬鹿にしたような目を向け、ふん、と鼻を鳴らす。

「やめておけ。お前さんみてぇなひょろっこい奴には務まらねぇよ」

 しっしっと鬱陶しそうに追い払おうとする。が、重実はなおも食い下がった。

「けど見たとこ、そうでかい荷はなさそうじゃねぇか」

「馬鹿言え。今日はたまたまだ。いつもはもっと、でかい荷が入ってくる」

「でかいっても知れてるだろう。米俵が何十俵も入ってくることもあるまいし」

「ふん、そのまさかよ。前はそれこそ、米俵が何十俵と入ってきたぜ」

 きらりと重実の目が光る。

「本当か。そりゃあ大変だ。やっぱりそんな重いもののときは、特別金が良かったりするのかい? あ、でも人数も多いだろうから、そうでもねぇのかな」