それから二日後、重実の姿は城にほど近い仕舞屋にあった。いつまでも宿場に留まっているわけにもいかないし、何より藩内とはいえ宿場町は遠い。何かあったときに対応できないので、安芸津が用意したのだ。

「殿も心配しておられる故、早く始末をつけてしまいたいところだが」

 そろそろ小野の手配した下り米が届く。荷揚げ前に、大きく動くはずだ。

「下り米は藩からの正式な依頼なので、決まった問屋しか扱えぬ。此度は小野様の差配故、泉屋という米問屋が取り仕切るはずだが」

 泉屋は藩お抱えの米問屋だそうだ。

「なら下り米に関しては、心配いらないんじゃねぇの?」

「無事に陸に上がれば、な」

 米滋からすると、下り米が陸に上がってしまったら手を出せなくなる。それまでに何か手を打ってくるはずだ。

「でも舟を襲えばすぐにバレるぜ。目立つしなぁ」

「うむ……」

 安芸津も顎を撫でながら考える。

「何かあるはずなのだが。此度の下り米の差配をしくじれば、それはそのまま小野様の失態となる。ここしばらく姫君を追う田沢派の者が鳴りを潜めているのも、今は下り米のほうに気が向いているからではないか。小野様が失脚してしまえば、姫君は後からゆっくりとどうとでもできると思っているのだろう」

 安芸津が気を揉んでいる間に、下り米が城に入ったとの連絡があった。何事もなく荷下ろしされているという。

「……無事ならば、それに越したことはないのだが」

 納得いかない顔ながら、安芸津は急ぎ登城した。そこで、茫然自失の泉屋を見ることになる。