次の日、重実は宿場町の端のほうにある茶屋に陣取って、ひたすら道行く人を眺めた。

「ふーん、なるほど。確かにちらほら、怪しげな野郎が目につくな」

 団子をもしゃもしゃ頬張りながら、重実は旅装束でもない侍を観察した。旅装束を解いている、ということは、どこかの旅籠に泊まっているということだ。

『道行く人も大事かもしれんが、中に目を向けてもいいんじゃないか?』

 ふと肩の上の狐が言った。ん? と視線を戻すと、狐が、ちょい、と店の端の床几を指す。そこには巡礼のような格好の小男が、小さく座っていた。

『あ奴、何やらニオうぞ』

 注意して見てみても、特におかしいところはない。重実は早々に視線を切った。