「そうだな。安芸津もなかなかの遣い手のようだったが、奴の居場所は割れている。いついなくなるかわからぬおぬしを仕留めてから、改めてお相手願うことにする」
「おれもあんたとは決着をつけてから、すっきりと去りたいと思ってたところだ。思いが通じて嬉しいぜ」
鳥居は必ず、重実の前に姿を現すと思っていた。鳥居ほどの剣客となれば、己を脅かすほどの腕の相手と相まみえることは稀だ。その分そういった相手と剣を合わすことに、至上の悦びを感じる。まして立ち合いが中途半端に終わったとあれば、どうしても決着をつけたいと思うものなのだ。重実だってそうである。
「わしは、おぬしはてっきり死んだと思っておったのだがな」
ゆっくりと刀を抜き、鳥居が言う。
「なのにわざわざおれを追ってたのかい」
重実も右手で柄を握り、腰を落とした。
「おぬしを斬ったときに、確かに手応えはあった。だが何というのかな、死ぬほどの傷を負ったとは思えぬ動きが続いたというのか。倒れもしなかっただろう? だから余計気になって、探ったのだ」
「そしたら案の定、生きていた、と」
「信じられんがな」
鳥居はあの一撃で、今まで全て倒してきたのだろう。必殺の一撃を食らっても生きていたとなれば、より闘争心を掻き立てる。
「行くぞ」
鳥居が構えを取った。特に珍しくもない、まともな正眼。だが放たれる剣気は尋常ではない。身体が何倍も大きく見え、剣先は今にも突いてきそうな威圧がある。
「……凄ぇ……」
びりびりと剣気を肌に感じながらも、重実は思わず口角を上げた。これほどの遣い手、そうはいない。純粋な剣客としての血が沸き立つのを感じた。
『斬られるなよぉ』
狐がじりじりと後ずさり、重実から距離を取る。
「難しいかもしれん」
重実の額に汗が浮く。これほどの緊張、いつぶりだろう。
鳥居は正眼に構えたまま、じりじりと間合いを詰めてくる。さわ、と風が吹き、辺りに立ち込めた朝もやを流した。
「おれもあんたとは決着をつけてから、すっきりと去りたいと思ってたところだ。思いが通じて嬉しいぜ」
鳥居は必ず、重実の前に姿を現すと思っていた。鳥居ほどの剣客となれば、己を脅かすほどの腕の相手と相まみえることは稀だ。その分そういった相手と剣を合わすことに、至上の悦びを感じる。まして立ち合いが中途半端に終わったとあれば、どうしても決着をつけたいと思うものなのだ。重実だってそうである。
「わしは、おぬしはてっきり死んだと思っておったのだがな」
ゆっくりと刀を抜き、鳥居が言う。
「なのにわざわざおれを追ってたのかい」
重実も右手で柄を握り、腰を落とした。
「おぬしを斬ったときに、確かに手応えはあった。だが何というのかな、死ぬほどの傷を負ったとは思えぬ動きが続いたというのか。倒れもしなかっただろう? だから余計気になって、探ったのだ」
「そしたら案の定、生きていた、と」
「信じられんがな」
鳥居はあの一撃で、今まで全て倒してきたのだろう。必殺の一撃を食らっても生きていたとなれば、より闘争心を掻き立てる。
「行くぞ」
鳥居が構えを取った。特に珍しくもない、まともな正眼。だが放たれる剣気は尋常ではない。身体が何倍も大きく見え、剣先は今にも突いてきそうな威圧がある。
「……凄ぇ……」
びりびりと剣気を肌に感じながらも、重実は思わず口角を上げた。これほどの遣い手、そうはいない。純粋な剣客としての血が沸き立つのを感じた。
『斬られるなよぉ』
狐がじりじりと後ずさり、重実から距離を取る。
「難しいかもしれん」
重実の額に汗が浮く。これほどの緊張、いつぶりだろう。
鳥居は正眼に構えたまま、じりじりと間合いを詰めてくる。さわ、と風が吹き、辺りに立ち込めた朝もやを流した。