「天弧!」
その言葉に、ハッとしてサトリの腕の中で惟子は周りを見た。
いつもサトリが現れるように、音もなく静かに惟子とサトリは浮いていた。
そして最後に見た姿のてんが、一颯から惟子の石を奪うのが見えた。
「しまった」
隙をつかれたのだろう。奪われた石は宙をまってサトリの手へと戻る。
「覚李め……どうやってここに」
ギリギリと歯を鳴らしながら、苛立ちを隠そうともせず黒いオーラーを纏った黒蓮が二人を睨みつける。
「お前たちのおかげだな」
不敵な微笑みを浮かべたサトリは、真っ赤な瞳に、いつもは隠れていたのだろう大きな耳が髪から出ていた。
「この半人前が。竜にも狐にもなることかできない出来損ないが」
少し冷静になったのか、挑発するように黒蓮は言葉を発した。
「お前こそ、もうその竜の姿から元に戻れぬだろう」
図星を付かれたのか、黒蓮が大きな尾を振り回した。
「うるさい! 我はこれから覚醒をして真の姿になるのだ。お前に負ける訳がないだろう。さあその娘を渡せ」
「させるか!」
そう言うと天狐が竜の前へとたちはがった。
「天弧、私の命令だ。下がれ。お前は一颯を」
「しかし覚李様!」
引き下がらない天狐に、一瞬サトリの妖気がふくれあがり、周りの空気がピリピリと振動するのが分かった。
「わかりました」
そう言うと、天狐は一颯に視線を向けた。
「なめられたものだな」
一颯の言葉でそちらでも激しい戦いが始まった。
「これで直接お前を潰せるというわけだな。今言った自分の言葉をすぐに後悔することになるぞ」
黒蓮はなおも尾をゆっくりと振りながら、少し上に浮くサトリを見据えた。
「それはどうかな?」
「それはお前が一番自分でわかっているのではないか?完全体の竜の力を持たないお前が」
その言葉を合図に、黒蓮の猛攻が始まった。
サトリは惟子を抱きながらなんとかその攻撃をかわしているように見えた。
「サトリさん、私を放して。足手まといだわ」
「それはしない。惟子は俺が守る」
その言葉に、惟子は自分の無力さに泣きそうになった。
(これじゃあ、本当に私は足手まといじゃない。サトリさんを助けるためにきたはずなのに。そして暁や、お絹を助けないといけないのに)
ギュッとサトリの手を握った瞬間、先ほど天狐から取り戻した妖石がすさまじい光を放った。
「きゃあ!」
あまりの衝撃に惟子は叫び声を上げた。そして無意識に惟子が赤紫の光を放つ。
「闇の力! 俺によこせ」
黒蓮がその言葉を叫びながら、惟子に手を伸ばす。
「違うわよ!闇の力なんかじゃない! 光の力よ!」
声の限り叫んだ惟子の言葉に、サトリからも黄色い光が放たれると、その3つの光はやがて1つになり、黄金色の光がふたりを包み込んだ。
「これは……?」
惟子はポワリと温かい空気に包み込まれたように、体が温かくなる気がした。
「黒蓮! 終わりだ」
サトリの冷静で静かなその言葉と同時に、激しく目が眩むほどの光と衝撃があたりを包んだ。
ドーオーンという爆音とともに、石の壁が吹き飛び溶岩が飛び散る。
「お絹!」
惟子は横たわるお絹と暁に向かって叫び声を上げた。
「こちらはお任せを。お嫁様」
天狐の結界が二人を守っているのが解り、惟子はホッと息を吐いた。
「惟子」
サトリのその言葉に、惟子はなぜか自分のなすべきことがわかったことに驚いた。
小さく頷き、呼吸を整えると、サトリと手を取り合う。
「「浄化」」
声を合わせてそう唱えると、黒蓮は断末魔の叫び声をあげて闇へと吸い込まれていくのが見えた。
あたりがシーンと静まり返ると、急に高度が下がるのがわかった。
その言葉に、ハッとしてサトリの腕の中で惟子は周りを見た。
いつもサトリが現れるように、音もなく静かに惟子とサトリは浮いていた。
そして最後に見た姿のてんが、一颯から惟子の石を奪うのが見えた。
「しまった」
隙をつかれたのだろう。奪われた石は宙をまってサトリの手へと戻る。
「覚李め……どうやってここに」
ギリギリと歯を鳴らしながら、苛立ちを隠そうともせず黒いオーラーを纏った黒蓮が二人を睨みつける。
「お前たちのおかげだな」
不敵な微笑みを浮かべたサトリは、真っ赤な瞳に、いつもは隠れていたのだろう大きな耳が髪から出ていた。
「この半人前が。竜にも狐にもなることかできない出来損ないが」
少し冷静になったのか、挑発するように黒蓮は言葉を発した。
「お前こそ、もうその竜の姿から元に戻れぬだろう」
図星を付かれたのか、黒蓮が大きな尾を振り回した。
「うるさい! 我はこれから覚醒をして真の姿になるのだ。お前に負ける訳がないだろう。さあその娘を渡せ」
「させるか!」
そう言うと天狐が竜の前へとたちはがった。
「天弧、私の命令だ。下がれ。お前は一颯を」
「しかし覚李様!」
引き下がらない天狐に、一瞬サトリの妖気がふくれあがり、周りの空気がピリピリと振動するのが分かった。
「わかりました」
そう言うと、天狐は一颯に視線を向けた。
「なめられたものだな」
一颯の言葉でそちらでも激しい戦いが始まった。
「これで直接お前を潰せるというわけだな。今言った自分の言葉をすぐに後悔することになるぞ」
黒蓮はなおも尾をゆっくりと振りながら、少し上に浮くサトリを見据えた。
「それはどうかな?」
「それはお前が一番自分でわかっているのではないか?完全体の竜の力を持たないお前が」
その言葉を合図に、黒蓮の猛攻が始まった。
サトリは惟子を抱きながらなんとかその攻撃をかわしているように見えた。
「サトリさん、私を放して。足手まといだわ」
「それはしない。惟子は俺が守る」
その言葉に、惟子は自分の無力さに泣きそうになった。
(これじゃあ、本当に私は足手まといじゃない。サトリさんを助けるためにきたはずなのに。そして暁や、お絹を助けないといけないのに)
ギュッとサトリの手を握った瞬間、先ほど天狐から取り戻した妖石がすさまじい光を放った。
「きゃあ!」
あまりの衝撃に惟子は叫び声を上げた。そして無意識に惟子が赤紫の光を放つ。
「闇の力! 俺によこせ」
黒蓮がその言葉を叫びながら、惟子に手を伸ばす。
「違うわよ!闇の力なんかじゃない! 光の力よ!」
声の限り叫んだ惟子の言葉に、サトリからも黄色い光が放たれると、その3つの光はやがて1つになり、黄金色の光がふたりを包み込んだ。
「これは……?」
惟子はポワリと温かい空気に包み込まれたように、体が温かくなる気がした。
「黒蓮! 終わりだ」
サトリの冷静で静かなその言葉と同時に、激しく目が眩むほどの光と衝撃があたりを包んだ。
ドーオーンという爆音とともに、石の壁が吹き飛び溶岩が飛び散る。
「お絹!」
惟子は横たわるお絹と暁に向かって叫び声を上げた。
「こちらはお任せを。お嫁様」
天狐の結界が二人を守っているのが解り、惟子はホッと息を吐いた。
「惟子」
サトリのその言葉に、惟子はなぜか自分のなすべきことがわかったことに驚いた。
小さく頷き、呼吸を整えると、サトリと手を取り合う。
「「浄化」」
声を合わせてそう唱えると、黒蓮は断末魔の叫び声をあげて闇へと吸い込まれていくのが見えた。
あたりがシーンと静まり返ると、急に高度が下がるのがわかった。