翌日惟子は初出勤のため、始めて上へ向かう階段を上ぼっていた。
登りきるとそこには、赤い大きなもんがあり、門番なのだろう、金棒を持った赤と青の鬼が左右に立っていた。
目は一つで身長は惟子の3倍程あるその鬼は、ちらりと一つだけある目を動かすと下にいた惟子をみた。
「あの……」
「新しい厨房のものか?」
「はい」
意外にも普通の声で言われ、惟子はコクコクと頭を振った。
「聞いている。そこへ」
そう言うと、鬼の横に設置されていた四角い箱のような場所を指さした。
「ああ、ここにまた手をかざせばいいのね?」
「そうだ。ここで来たことをチェックしている。中にも時間を刻印するところもある。まず中は言ったら目の前の広間にいる料理のところにいけ」
意外にも丁寧に交互に話す鬼たちに、左右首を大きく動かしながら惟子は話をきいていた。
「ありがとう」
礼を言い、指定された場所に手をかざすと、『ギィー』と音を立てて鬼と同じぐらいある扉が自動で開いた。
門の奥は広い広間が広がり、天井には金の装飾がこれでもかとされていて、豪華絢爛その言葉がぴったりな場所だった。
広間には左右前後に扉があり、いろいろなところへつながっているようだった。
(ここも迷子になるわね)
キョロキョロとあたりを見渡すと、右の隅にもたれ掛かっているコックコートをきたあやかしをみつけた。
(あれが言われた料理長ね)
惟子が近づいて行くと、そこには大黒屋にいた料理長に似たあやかしがいた。
(料理をするあやかしは蛙が一般的なのかしら)
そんなことを思いつつ、惟子は挨拶をすると料理長をみた。
「お前が……」
そう言った料理長に、ここでもまたいろいろ面倒なことをいわれるのだろうかと、心の中で小さくため息をつく。
「あの、私なんでもやりますから。皿洗いでも……」
そこまで言ったところで、料理長はポロポロと涙を流す。
「ありがとう」
「へぇ?」
あまりにも意外な言葉に、惟子の口からも驚きのあまり意味不明な言葉が漏れた。
「名前は?」
「お絹よ」
これからどんな展開が待ち受けているかわからず、取り合えず惟子はそれだけを答えると、蛙の料理長にチラシと視線を送る。
「こっちだ」
それだけを言うと、料理長は右の扉の方へと歩いて行った。
その扉を開けると長い廊下になっており、まるでマンションのように扉が並んでいる。
「すごくたくさんドアがあるのね」
惟子が興味津々で聞くと、料理長はその問いには答えず6つ目の扉の前で足を止めた。
「ここだ」
その言葉と一緒にそれほど大きないドアノブを回すと、音もなく扉が開いた。
「あら?」
こじんまりとした部屋を思い浮かべていた惟子は、扉の中に一歩足を踏み入れると驚いて足を止めた。
そこはかなり広い厨房で、何十というあやかしがあくせく動いていた。
「6番目までの扉のどこからでも入れる」
(なにそれ?!)
笑いそうになるのをなんとか堪えて、部屋をみれば扉がたくさんついていた。
「ここでまて」
またもやそれだけを言うと、料理長は厨房の右端へと歩いて行った。
そこはさらに部屋になっているようで、料理長はそこへと入っていった。
「ふふ。口数の少ない料理長なのね」
無口でいかにも職人気質といった料理長に、惟子は好感をもつと笑みを漏らした。
その間もなにやら野菜を洗ったり、皿を片付けたりしているあやかし達がチラチラと惟子を見る。
(そりゃそうよね。新入りはどんな場所でも気になるわよね)
自分でもそうだろうと、惟子は納得すると視線を下に向けた。
「待たせたな。これ」
そう言うと真っ白な割烹着のようなものが渡された。
「あの右の扉が女の更衣室だから」
またもやぶっきらぼうに言った料理長に、惟子は「着替えてきますね」そう声を掛け更衣室に向かった。
登りきるとそこには、赤い大きなもんがあり、門番なのだろう、金棒を持った赤と青の鬼が左右に立っていた。
目は一つで身長は惟子の3倍程あるその鬼は、ちらりと一つだけある目を動かすと下にいた惟子をみた。
「あの……」
「新しい厨房のものか?」
「はい」
意外にも普通の声で言われ、惟子はコクコクと頭を振った。
「聞いている。そこへ」
そう言うと、鬼の横に設置されていた四角い箱のような場所を指さした。
「ああ、ここにまた手をかざせばいいのね?」
「そうだ。ここで来たことをチェックしている。中にも時間を刻印するところもある。まず中は言ったら目の前の広間にいる料理のところにいけ」
意外にも丁寧に交互に話す鬼たちに、左右首を大きく動かしながら惟子は話をきいていた。
「ありがとう」
礼を言い、指定された場所に手をかざすと、『ギィー』と音を立てて鬼と同じぐらいある扉が自動で開いた。
門の奥は広い広間が広がり、天井には金の装飾がこれでもかとされていて、豪華絢爛その言葉がぴったりな場所だった。
広間には左右前後に扉があり、いろいろなところへつながっているようだった。
(ここも迷子になるわね)
キョロキョロとあたりを見渡すと、右の隅にもたれ掛かっているコックコートをきたあやかしをみつけた。
(あれが言われた料理長ね)
惟子が近づいて行くと、そこには大黒屋にいた料理長に似たあやかしがいた。
(料理をするあやかしは蛙が一般的なのかしら)
そんなことを思いつつ、惟子は挨拶をすると料理長をみた。
「お前が……」
そう言った料理長に、ここでもまたいろいろ面倒なことをいわれるのだろうかと、心の中で小さくため息をつく。
「あの、私なんでもやりますから。皿洗いでも……」
そこまで言ったところで、料理長はポロポロと涙を流す。
「ありがとう」
「へぇ?」
あまりにも意外な言葉に、惟子の口からも驚きのあまり意味不明な言葉が漏れた。
「名前は?」
「お絹よ」
これからどんな展開が待ち受けているかわからず、取り合えず惟子はそれだけを答えると、蛙の料理長にチラシと視線を送る。
「こっちだ」
それだけを言うと、料理長は右の扉の方へと歩いて行った。
その扉を開けると長い廊下になっており、まるでマンションのように扉が並んでいる。
「すごくたくさんドアがあるのね」
惟子が興味津々で聞くと、料理長はその問いには答えず6つ目の扉の前で足を止めた。
「ここだ」
その言葉と一緒にそれほど大きないドアノブを回すと、音もなく扉が開いた。
「あら?」
こじんまりとした部屋を思い浮かべていた惟子は、扉の中に一歩足を踏み入れると驚いて足を止めた。
そこはかなり広い厨房で、何十というあやかしがあくせく動いていた。
「6番目までの扉のどこからでも入れる」
(なにそれ?!)
笑いそうになるのをなんとか堪えて、部屋をみれば扉がたくさんついていた。
「ここでまて」
またもやそれだけを言うと、料理長は厨房の右端へと歩いて行った。
そこはさらに部屋になっているようで、料理長はそこへと入っていった。
「ふふ。口数の少ない料理長なのね」
無口でいかにも職人気質といった料理長に、惟子は好感をもつと笑みを漏らした。
その間もなにやら野菜を洗ったり、皿を片付けたりしているあやかし達がチラチラと惟子を見る。
(そりゃそうよね。新入りはどんな場所でも気になるわよね)
自分でもそうだろうと、惟子は納得すると視線を下に向けた。
「待たせたな。これ」
そう言うと真っ白な割烹着のようなものが渡された。
「あの右の扉が女の更衣室だから」
またもやぶっきらぼうに言った料理長に、惟子は「着替えてきますね」そう声を掛け更衣室に向かった。