わらわらと増えるあやかしたちに、惟子は料理を再開した。

サトリはいつも通り、定位置である外が見える席に座りゆったりとコーヒーを飲んでいる。
服装が服装だけに、コーヒーカップがなぜかおかしくて、惟子はくすりと笑みを漏らした。

「てんちゃんたちおいで」
惟子は集まったてんと同じく小さなあやかしを呼ぶと、テーブルへ先ほどと同じ卵サンドを置く。

「さっきてんちゃんが雨を降らせちゃったから、半分乾燥してるトマト入りサンドイッチ」
惟子のその言葉に、てんが少し表情を曇らせた。

「僕、トマト嫌いなのに。それにさっきの雨はサトリ様だよ……」
ブツブツと文句を言うてんに、惟子はちょんとを突っつくと、「好き嫌いはダメよ」とにこりと微笑んだ。

そして目の前にある四角いサンドイッチを6等分にする。

「はい、召し上がれ」
その言葉に、てん以外のあやかしたちは嬉しそうに手を伸ばす。

「てん、お前そんな好き嫌いを言ってると、大きくなれないぞ」
からかうように言ったサトリの言葉に、ブスっとしながらてんはサンドイッチに手を伸ばした。

「サトリ様、僕はこれ以上大きくならなくていいんですよ」
そう言いながらもまだ温かいサンドイッチを咀嚼する。

「あっ、ゆいちゃんおいしい。僕トマト食べられたよ」
嬉しそうに言ったてんに、惟子は「干すと甘くなるのよ」そう言いながら、手早くサトリの分と自分の分を用意する。

「サトリさんはトマトいっぱい?」
外を見ていたサトリは「ああ」と答えると、そのまま視線を海へと向けていた。

出来上がったサンドイッチとヨーグルト、サラダを持ってサトリの横の席へと惟子は腰を下ろした。

「サトリさん、何かありそう?」
サンドイッチに手を伸ばしつつも、海から視線を外すことないサトリに惟子は少し不安になり、声を掛ける。

綺麗で妖艶な赤い瞳が少しだけ光を帯びている。

ハッとするほどキレイなこの人との出会いを惟子は思い出していた。